つづきです。

診察室へ戻った夫は、点滴室のベッドへと移され、点滴を受けたままベッドに横になりました。でも、そこでまた嘔吐したり。点滴はあまり効いていないようです。1時間ほどたったころでしょうか、検査の結果が出て、脳に出血は確認されず、血液検査でも異常は無かったことを知り、心底ホッとしました。「脳梗塞の疑いもまだ無いとは言い切れないのですが、おそらく耳の方(の異常)からくる症状ではないか」と言うことで、点滴が終わって容態が安定した頃に帰宅して、家の近所の耳鼻科で検査してくれとのこと。内心、(こんな容態でどうやって帰宅して、どうやって耳鼻科に連れて行けって言うの!?)と思いましたが、2本目の点滴が終了するころには、容態が回復していることを祈って承諾。 

午前5時ごろ、夫がトイレに行きたいと、ふらふらしながらトイレへ。ベッドへ戻ってきたとたん、またしても激しい嘔吐。でも、嘔吐しすぎて夫の胃の中は空っぽで、ようやく出てきたのは少量の胃液だけ。横になってじっとしていれば大丈夫なのですが、体を動かすと吐き気をもよおしてしまうらしいのです。家にいる時では、吐き気と嘔吐で横にすらなれない状態だったので、これでも多少は点滴が効いていると言うべきなのかも知れません。この状態では2本目の点滴が終了しても嘔吐が治まりそうに無いなと思ったので、看護士さんに、「できたら、このままこの病院の耳鼻科で検査してもらえないでしょうか?」と何度か依頼してみました。看護士さんも夫の容態があまり回復していないことはわかっていて、帰宅しろとは言いにくかったのでしょうか、本当は他の科での診察には予約が必要で、飛び込みでの診察はあまりできないらしいのですが、「では、救急扱いで話を通してみましょう」と言ってくれ、ありがたいことに、このままこの病院で耳鼻科と神経内科で検査を受けられることになったのでした。夫がいつまでも苦しそうにしているのを見かねたのか、点滴に眠くなる薬を入れられ、夫はやっと眠ることができたのでした。

夫が眠ったのを見て、私も少しホッとしました。けれど、いつまた嘔吐するかと心配で私は眠れず。点滴は3本目に突入。正直、2本目の点滴が終わる頃には容態も安定し、帰宅できるかと思っていたので、想像以上に夫の容態が悪いんだなと思うと、いたたまれない気持ちにもなりましたが、私は夫の眠るベッドの横でじっと見守ることしかできないのでした。とりあえず、このまま病院で耳鼻科と神経内科の検査をするということが確定したので、自宅で待機してくれている義母に電話して、まだまだ帰宅できそうにない旨と、息子を学校へ送り出してもらえるようにお願いしたのでした。実はこの電話をする時、私がこの約1年間ずっと愛用していた携帯ストラップの紐がプッツリと切れてしまい、ゾッとしたのでした。大丈夫。夫はきっと大丈夫。ふとよぎる縁起の悪い妄想を払拭すべく、何度も自分に言い聞かせたのでした。

朝7時が過ぎ、息子ももう起きているはずの時間に、また義母に電話してみました。目が覚めたらパパとママがいなくて、息子もさぞかしびっくりしただろうと思い、電話口に息子を出してもらいました。

ゴン「もしもし?」

「もしもし、おはよう。あのね、パパが急に病気になっちゃってね、今、病院にいるのね。」

「うん。」

「悪いけど、ばあばと学校に行ってくれる?」

「うん。」

「自分で学校行く準備はできるよね?」

「うん。」

「じゃあね、よろしくね。」

「うん。」

電話の向こう側で終始、「うん。」だけだった息子。でもその声から、息子の不安そうな気持ちが十分過ぎるほど伝わってきて、いたたまれない気持ちになりました。かといって、私は病院からまだ離れるわけにはいかず、息子にはここで踏ん張って耐えてもらうしかありません。息子の不安な気持ちに気付かない振りをして電話を切ったのでした。

8時半になり、夫は車椅子で耳鼻科の方へ移されました。まだ耳鼻科の先生が入らしてないという事で、耳鼻科のベッドで横にさせてもらうことに。その後、9時過ぎから耳鼻科で検査、検査、検査。いろんな検査と診察を受けた結果、先生いわく、「これは(神経)内科じゃないね。」と。先生の下した診断は、「前庭神経炎」でした。初めて聞く病名に???でしたが、後からネットで調べてみてやっと納得しました。どんな病気かは、こちら(←クリック)やこちら(←クリック)のHPでわかるかと思います。

簡単に説明すると、耳の中には聴覚を伝える神経と平衡感覚を伝える神経があるのですが、平衡感覚を伝える神経(前庭神経)だけが突然障害を受ける病気が、前庭神経炎なんだそうです。有名な人で言うと、これの聴覚を伝える神経の方に障害を受けたのが、歌手の浜崎あゆみさんですよね(突発性難聴)。夫の場合、平衡感覚の方でしたので、聴覚にはまったく障害はありません。ただ、ふらつきはもしかしたら残るかもしれませんが。とりあえず、命には別状無いこと、若い人ほど治りが早いということを知り、安堵しました。

そうそう、検査結果が出るまでには1時間ぐらいかかったのですが、その間に夫が「お腹が空いた」と言うほどにまで回復し、そういえば朝ごはんも食べてなかったと、病院の売店で軽く買って食べたのですが、夫はあんなに嘔吐した人とは思えないぐらいの食欲でむしゃむしゃとサンドイッチやらヨーグルトやらをたいらげていました。点滴もかなり効いたということでしょうか。その後、また追加で点滴を2本ほど入れたのですが、その頃には車椅子なしでふらつきながらも歩けるようにまで回復、先生には、「まだ検査がいくつか残っているので、ふらつきもあるし入院した方が良い」とは言われたのですが、夫の強い希望で入院はせず、翌日また朝一で点滴と検査をしに来るようにということで、やっと帰宅できることになりました。

病院の会計では、受付の方に、「救急でいらして、そのまま今までいたんですか!?」と聞かれ、「はい」と答えたのですが、そういえばと時計を見てみると、午後2時。なんだかんだいって救急車で病院に運ばれてきてから半日が経っていたようです。タクシーで帰宅すると、お留守番してくださった義母も一安心したからと家に帰り、どうやら息子の下校時間までには私も夫も家にいることができました。家に着くなりまた「腹減った」と夫。うどんを作ってやるとまた横になり睡眠。

そろそろ息子が家に帰ってくる頃だな・・・とベランダに出てみると、学校から帰ってくる息子の姿を確認することができました。「ゴン!!」とベランダから声を掛けると、きょろきょろしている息子。もう一度、「ゴン!!」と叫ぶと、やっと気付き、私が手を振ると満面の笑顔で手を振り返していました。下校してもパパとママがいないと思っていたらしく、帰宅後の息子は、大喜びでした。

夫の病気の完治には、長い目で見てまだ1ヶ月ほどかかりそうですが、今回の一件で、普段健康でいられることがどれほど幸せであるかということ、いつもの日常を過ごせることがどれだけ幸せなことであるかを改めて実感させられたのでした。夫は滅多なことでは体調不良を訴えないで、我慢してしまうタイプです。普段、あまり風邪を引いたり体調不良を訴えたりしないのをいいことに、夫がいつも健康でいてくれるような錯覚を起こしていた私にとっては、今回のことは良い薬になったように思います。ここのところ、学校の委員の仕事のことでいっぱいいっぱいになっていた私に、夫はかなり気を使ってくれていたのかもしれません。

この病気は、疲れやストレスや睡眠不足などが蓄積すると症状が悪化するのだとか。夫の気持ちや体が平穏に保たれ、ゆっくりと休めるよう、今後はもっともっと労わってやろうと思っています。夫の病気に比べたら、学校の委員の仕事なんて、なんて小さい悩みなんでしょう!!夫の通院はしばらく続くと思いますが、気力とパワーで今月を乗り切っていこうという気持ちがさらに倍増しました。 

最後に・・・皆様も健康には十分気をつけて下さいね。こんな病気もあるんです。なんらかの参考になればと長々とドキュメンタリー風に書かせてもらいました。




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